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最新のおしらせ

  • 2019年9月12日(木) 投稿

    2019年9月8日に関東に上陸した大型台風15号による大規模長期間停電のお話です。

    ただの「停電だけ」が災害になった瞬間

    ありませんでした。

    「大地震だ!災害だー!自衛隊をー!」みたいな瞬間が一切ありませんでした。

    それなのに、今回の「ただの停電だけ」は、当事者からするとどう考えても災害で、いつのまにか災害で、何名もの方が亡くなっているのに当事者以外は気づけないような奇妙な、じわじわとした災害だったので、そのお話です。

    長い記事です。

    長いの読めない!という方は、中盤をとばして「さいごに」だけでも読んでいただけますと嬉しいです

    じわじわとだめになるライフライン
    「停電している時間の長さ」が「ただの停電」を災害にした

    いつも「停電」というと、電力会社さんのご尽力のおかげで「数分もしくは長くても数時間で解消するのでまぁ大丈夫」みたいなイメージが私にはありました。

    台風の規模が大きいけれど、今回もそうかなと思ってひたすら電力の復旧を待ちました。

    待って、その間考えて、当事者になってはじめて気づいたことを書きます。

    短時間の停電なら

    ・水に関して特に問題は発生しない。電気制御のトイレは少し困るかも。コンビニなどにいけばOK。

    停電が長時間になると「水」は

    ・水の供給を電気制御している住宅、施設で断水する

    ・浄水場などの自家発電設備容量率が低いなどの原因で、地域全体がいずれ断水する

    水が飲めなくなる。=熱中症の危険

    ・トイレが流せなくなる。

    ・お湯がでない。最近の給湯器は電気制御のものが多いため。

    ・まともな風呂に入れない。よくて水風呂or水シャワー。汗まみれなのに数日お風呂にはいれないととてもつらい

    ・水を求める人が増え、いずれ地域のあらゆるお店から水が買えなくなる

    通信(スマホ、電話、ネット)
    短時間の停電なら

    そこまで困らない。コンビニなどでモバイルバッテリーや電池なども購入できる。

    停電が長時間になると「通信」は

    ・充電ができずいずれ電源がはいらなくなる。

    ・停電から24時間程度でスマホが圏外に。基地局に繋がらなくなる。基地局の自家発電が追いつかなくなるため?

    ・ネットが見られない。=ラジオなどで災害情報を発信してもらえないと、情報を入手できない。いつ復旧するかわからず、長引くほど不安に。

    ・家族、友人知人の安否が確認できない。

    ・市役所などで長時間並んでスマホ充電しても、電気のない家に帰るとネット電話共につながらない。

    食料、物資
    短時間の停電なら

    ・特に困らない。家にあるものか、近所のコンビニやスーパーで買えばOK。

    夏の停電が長時間になると「食料、物資」は

    ・家の冷蔵、冷凍庫内の食料が腐る。夏はとくにひどい。24時間ほどで食べられなくなるので捨てることに。

    食料を買えない。電気がないとコンビニ・スーパーは営業ができない

    ・食料を売ってくれる個人商店などには人が殺到。いずれ食料がなくなり買えなくなる。

    ・営業しているお店にたどり着いても、「一度常温になってしまった冷蔵冷凍品なので売れません」

    「停電中」「電力に不安があるうち」は、お店も冷蔵冷凍品を新たに入荷できない。

    ・飲食店「本日休業」もしくは「食材がないためご案内できません」の張り紙。

    ・停電が長引くほど食糧/物資不足に拍車がかかる。一個人や一企業/自治体では対応しきれないレベルのライフライン壊滅状態になっていく。

    ・電池がなくなる。夜はひたすら真っ暗で、とても静か。

    その他:真夏+大規模長時間停電の影響

    病院なども休業多数。

    ・市役所などで物資の配給があっても、酷暑のため車+ガソリンがないと配給場所にたどり着けない

    家でじっとしているしかない状況の人がかなりの数いる

    ・暑いのでガスが使えても料理はとてもできる状態ではない。カップ麺も食べると暑くなるため体力を消耗する。

    ・皆が食料や物資を求め車ででかけるため、渋滞。ガソリン消費。追加の食料もなかなか届かない

    ・国道以外は信号機も停電交通事故多発。警察車両、救急車両があちこちに出動。

    営業停止するガソリンスタンドだらけ。

    ・営業中のガソリンスタンドは長蛇の列。20Lまで!などの給油制限あり給油まで1時間かかることも。

    電力が回復した家、地域から、とたんに物凄く「ラク」になる空調が整うだけで体力の消耗度が段違いと感じる。電気がないところは別世界レベルのつらさ

    ・停電と復旧は地域単位。ご近所さんは皆停電しているので「お風呂がダメで……」「じゃあうちの使いな!」のような近隣住民同士の助け合いが困難。


    記録:停電から

    停電から5分、10分、30分、1時間。 スマホで時間をつぶす。充電も余裕。

    停電から3時間。 気温33度+湿度75%。台風後なのでとにかく暑い。ベッドの上でじっと横になり復旧をまつ。

    停電から6時間。 電気がなくては何もできないため仕事は休み。いつ復旧するのだろうか?わからない。

    停電から12時間。 スマホのネットがつながらなくなる。ものを食べると体温があがるのでただ横になっているほうがまだラク。

    停電から……15時間。 「これは」と思い、情報を集めるため車に乗って家を飛び出す。

    停電1日目の夜。

    車でラジオ、TVを確認。ともに通常営業?通常の放送。

    スマホを車の電力で充電。

    周囲は真っ暗。高台にのぼって、暗闇の中電気がついている方角(地域)を確認。

    電気がついている地域に移動し、停電していない場所ならスマホのネットが繋がることを確認。

    インターネットを見ても災害情報はない。停電の復旧見込みについても情報なし。

    まず最優先で必要なのが「情報、水、食料、熱中症にならないこと」

    次点で「ガソリン、自分の安心と安全、体と精神の健康」と考えて、24h営業のお店を周り一週間分の水食糧を買って、ガソリンを補充。

    周囲のお店の営業状態を確認したあと、熱中症対策のためクーラーがある車内で車中泊。

    停電2日目。

    この時点で、テレビ・ラジオからは停電や災害についての必要な情報が得られない。

    県内で熱中症のため亡くなる方の報道。

    コンビニから食料が消える。補充はされていない様子。

    運よく食料があるコンビニを見つけても、「一度常温になってしまったものなので、この冷凍冷蔵品は売れません」 で、購入できない。

    少し頭が痛い。頭痛薬を飲んで、水分をこまめに・多めにとった。

    停電のため給湯器が使えないので、水シャワーをあびたあと、両親の安否確認のため1時間離れたところにある実家へ移動。

    買った物資と情報を母に渡したところで、「実家は停電だけでなく断水もしていた」ことを知ってなぜもっと早くこなかったのかと大後悔……。母は車がないため外に出られないのに。

    停電すると、電気で制御している給水施設が断水するということに気づけなかった。

    夜、母を連れていくため営業している銭湯を調べて、車中泊。

    街は8割以上がまだ真っ暗。

    ネットニュースなどで「大規模停電」「復旧の見通し」などがとりあげられ始める。

    診療受付している病院が熱中症の人で溢れかえってパンク状態

    世間からは「ただの停電」だと思われている?

    停電3日目。

    スーパーには「調理しないと食べられない」野菜などだけが残っている状態。

    コンビニに追加で入荷される食糧はヤマザキさんのパンのみ。すぐに売り切れる。

    夕方すぎからガソリンスタンドに50台以上の長蛇の列。1時間~待ちのところも

    断水している家もあるので、飲み物すらお店から消え始める。

    雷のため「復旧の見通し」通りに復電はされなかった様子。

    NHKさんなどで災害情報のテロップなどが流れはじめる。その他の局とラジオからは必要な情報が得られない。

    復電した地域を夜中に自分の目で確認。まだかなりの地域が停電中。

    停電4日目

    街は一部がまだ真っ暗。

    停電だけでなく、台風で倒壊などがひどい地域もあることを知る。

    停電の全面復旧は明日以降の見込みとのこと。

    4日目にして世間が「災害」だと認知しはじめてくれたと感じる。

    停電5日目

    国が災害救助法を適用すると発表。


    さいごに

    「大地震だ!災害だー!自衛隊をー!」みたいな、

    「これは災害で、助けが必要だ!と思える、思ってもらえる瞬間」みたいなものが一切ありませんでした。

    時間が経つにつれて、ただじわじわと状況が悪くなっていく感じだけがありました。

    最初は「ただの停電」だったはずなのに、いつのまにか災害になってしまっていて、「気づけない、気づかれない怖さ」みたいなものを感じました。

    「停電している時間の長さ」はただの停電を「停電+水+食糧+情報ゼロ+健康+安全までもが不安な状態=災害」にしてしまうんだということを体験しました。

    車+ガソリンがある人はまだいいけれど、

    「33度前後の真夏日のなか、何日間も自宅で情報もなく、ライフライン×、じわじわ汗をかき続けながらお風呂にも入れず、まともなごはんも食べられず、体力を消耗するので外にも出られず、熱中症になりかけながら、ゆっくりとすぎる時間の中でひたすら停電が解消するのをただただ待っている方がたくさんいる可能性が高い

    ことを考えると、とても恐ろしくて、ただ知っていただきたくて、この記事を書きました。

    ライフラインの復旧に夜通し尽力下さっている方、ツイッターなどでリプや情報を下さった方、RTなどしてくださった方、本当にありがとうございます。

    「24時間以上の停電は災害とみなして報道・救援活動を開始する」「長時間停電の場合、電力の復旧作業を一企業だけに頼らない」ようなきまりごとや仕組みができたらいいななんて考えるだけはしましたが

    私には、自分と家族の身を守ることと、この記事を書くことしかできませんでした。ごめんなさい。

    これ以上、大規模長期間停電が原因で亡くなる方、つらい思いをする方が増えませんように。